第 1号 地域の子は、地域で育てる。(その1) 「この文言の受けとめについて」

「地域の子どもは、地域で育てる。」という文言は、今日、社会用語として市民権を獲得し、独り歩きをしている。

 教育関係者は人間形成の立場から、学校教育の使命役割と地域社会・家庭のそれぞれの役割分担を明確にする中で、固有の責任を果たしてもらいたい、との観 点からこの文言を受けとめようとされる。

 社会教育・行政関係者は、かつてのローカルコミュニケーション機能の回復を意図され、地域教育力の充実と活性化を期待されて、この文言を気軽に使われて いる。

 一方、地域社会では、家族構成が三世代から二世代となり、しかも、少人数家族の中にあっては、家庭の教育力をこれ以上充実することは至難の課題となって いる。また、地域の世帯構成が若返り、かつての縦割り社会から横平等社会となり、それぞれ固有の価値観や人間関係を大切に生きようとするあまり、連携や連 帯を呼びかける「地域の子」という意識や「地域で育てる」という文言を、自らの課題として真剣に受けとめようとはされない。

「地域の子は地域で育てる。」という文言を、どこで、誰が受けとめてくださるのでしょうか。

 それとも、文言の独り歩きを傍観していくことになるのでしょうか。

 この対応の難しい文言を皆さんとともに考えてみたいのであります。

 現代は、地方分権、地方自治の時代と言われ、住民の自立性や主体性が行政に強く反映されていく社会となりつつあります。その中にあって住民一人一人は、 市民権と固有の要望を大切に、自らの生活を築いておられます。

 そのことはそれとして認められるとしても、地域に生活する居住人としての存在と、地域社会の構成員としての存在の二面性を、地域の皆さんがどのように認 識されておられるのでしょうか。

 地域社会の構成員としての認識、ローカルコミュニティの一員であることの自覚や意識の温度差が、この文言を受けとめる大切な素地となっているものと考え ますがいかがでしょうか。

 地域の子は地域で育てることは国民的課題でありますが、文言を言い交わすだけでなく、地域の絆を訴え合う呼びかけにしていきたいものであります。